M&Aに関わるプレイヤーについての整理が必要な理由は,そういう人たちが価値を奪い合う構図を整理して自社あるいは自身の利益を最大化するためである。
・売り手企業オーナー
・仲介会社(M&Aセンターなど)
・各種士業(DDを担当)
・レンダー(資金の貸し手)
・エクイティ(出資者)
※その他,FAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービスと言い,監査法人の系列の ,M & A の(仲介ではなく)セルサイドバイサイドの代理人と言うかそういう位置づけの人達)も登場することがある。
まず案件を持っている人がKINGであり,価値の大部分を取るパワーを有する。M&Aの需給環境においては,金を持っている人は必ずしもKINGではない。
KINGは自分でやれる範囲は限られてるのでアウトソースをしていく。そうすると仲介会社にお願いして相当の対価を支払う。さしずめQUEENといったところか。DDで入る会計士や弁護士は置き換えが利くスキルであり,付加価値に対してアンダーバリューされがちである。レンダー(銀行)もしっかり準備して調達する場合は同様である。月利3%の世界もあったりはする。
買収手続の内容と時間軸から仲介会社の仕事を考えてみる。
会社を売ろうと思い立ったオーナーはまず何をしたらよいかわからない。そこでこっそりインターネットで調べてM&Aセンターに相談する。M&Aセンターで受けられない案件はもう少し小さい仲介会社に流れていく。
最初に取り掛かるのはノンネームシート(慣用的に「ノンネーム」という)を作成する作業である。これは,会社の名前は伏せたA4一枚ぐらいの紙である。求職表みたいなやつ。
そしてエクイティ(買い手企業,ファンド,投資家)は,こういう会社さんが売りに出ていますっていう情報を仲介会社からもらう。仲介会社は関心あるかどうか尋ねてくるが,大半は関心はない案件である。関心があれば「関心あるんで秘密保持契約締結しますんでもっと詳しい情報下さい」とお願いする。その関心表明に対し,売り手オーナーさんは,考える。売り手さんにとっても買い手さんの「属性」や「具体的に誰か?」と非常に重要になるので,まず買い手候補者の審査がなされる。それでOKであれば,売り手の社名をNDA締結を条件に開示していいとなる。例えばヤフーが「『買いたい』って言ってます」って言ったら,「いい会社。じゃあ是非うちの社名や情報も開示していい。」となる。一方,本当に憎きライバル会社が買いたいと言ってきてますと言った時には,「そこには絶対開示 NG 」となる。
仲介会社は会社概要資料を作成する(インフォメーションメモランダム,「IM」と慣用されている)。企業価値評価,株式価値評価とか,業績,資産,ビジネス内容,等読み応えのある内容である。プロのエクイティはそれを確認しつつ,興信所の調査書や会社のウェブサイトなどで,この段階で,調べ上げる。
そうやってプロのエクイティはちゃんと分析をした状態で価格提案を行う(レターオヴインテント,LOI,意向表明書と慣用される)。法的拘束力のない事実上の意向表明である。こういう条件でいくらで買いたいというのを出す。もちろん,関心表明後社名を見たりIMを読んだりしてドロップする場合も大多数ある。
この段階でいい会社の売り手は何社からもオファーもらう。その中から,いい会社を2-3社,選んでトップ面談に進む。その売りたい会社のオーナーさんが買いたい会社のトップと面談するところが実質的な交渉のスタートである。それでお互い良いとなれば,法的に拘束力がある形で独占交渉権を付与し,より深い情報交換,買収監査を許可して実施していくことになる。ここからは「デリバリー」の世界である。仲介会社はこのデリバリーをそつなく行う。
独占交渉権の付与は重大なイベントで,通常のM&Aはもうここでここでオークションが終わってるような感じである。事業会社売りたい会社さんも何回も何回受けてられないためである。実業に忙しくてここで実質的に決着がつくというのがM&Aのポイントと思われる。
上記のようなM&Aに関わるプレイヤーについての整理を踏まえると,案件の源泉に近いところに行くこと,置き換え可能な仕事は積極的にリバースエンジニアリングしながらアウトソースすることが最も有利である。