第4回公募に向けた,事業再構築補助金で考えておくべきポイントと現在の最新状況を,多数の申請プロマネ業務・事業計画書作成業務に関与し,採択(補助額6000万円,事業規模1億円)を獲得した経験から解説する。
目次
- そもそも「事業再構築補助金」とは?
- 対象は?
- 採択率は?
- 事業再構築補助金の申請に必要な事業計画書とは?
- 当社が支援した事業計画書の例
- 事業計画書の形式は?
- テンプレートのようなものはあるのか?
- 中身をどう充実させるか?
- 事業計画書の分量は?
- 審査基準は?
- 審査項目(今後変更になる可能性あり)
- 第1回公募から第3回公募までの傾向と,第4回公募の見通し
- 効率的な共同作業の進め方は?
- どういうパートナーと協力するのが良いか?
- 「採択されて終わり」ではない
- 最後に
そもそも「事業再構築補助金」とは?
今年から始まった補助金。経済産業省が1兆円という破格の予算規模で,中小中堅企業の新規ビジネスの推進を支援するという補助金であり,コロナで傷んだビジネスを縮小して新規ビジネスを構築していくというところを支援しようということで,ちょっと今までなかったような規模で幅広い業種に適用されるユニバーサルな性格の補助金である。製造業,小売業,IT 企業,ベンチャー企業,老舗企業,もうとにかく適用範囲が広い。
対象は?
対象は,中小中堅企業。中小企業基本法の定義を借用し,資本金や従業員数で区切られる。補助対象事業は,新規の設備投資だったりその設備投資でやろうとしてるビジネスにかかる経費に対し,枠にもよるが,通常枠では基本的には2/3が補助金で出る形になっています。最低補助額が100万円で,上限額が従業員数に応じ,大きめの会社だと8000万円という形になっている。そうすると,2/3補助が出るということから,1億円ぐらいの投資規模で新規ビジネスへの投資が行える。なお,コロナの影響を受けて一定期間の売上高が前年対比で減少したことが要件となる。基本的に,対象となる企業において,活用しない理由はないと思われる。
採択率は?
通常枠の採択率は,第1回公募で3割,第2回公募で3割6分という状況である。今回,第3回公募まで終わっており,それについては採択結果の発表が11月末という状況である。現場の感覚としては,7割程度落とされるということで,企業の方は実際にやってみると想像以上に厳しいと感じると思う。
事業再構築補助金の申請に必要な事業計画書とは?
今回は企業が自分で事業計画書を書けるようにすることが求められている。中小企業庁の見解を参照しても,オリジナリティを問われている。実際,今回,手引きや公募要領にて項目や審査基準は示されているが,中身や形式は自分たちで考えろということになっている。事業計画書と格闘させることにより,企業の力を引き出そうという趣旨を,非常に感じる。ちゃんとマーケットの情報,競争優位な点がしっかりと書かれていなかった企業が多かったということが,講評に置いて示されている。思い付きや結論ありきで自社に都合のいい事実を集めて並べるだけではだめなのだ。
※当社が支援した事業計画書の例
上記の通り,事業計画は項目のみ示されており,形式は指定されていない。Wordでなきゃダメだと言っているコンサルタントが多く,スライド形式では駄目だという意見が多かったが,採択結果を見ると,全然そんなことはなく,スライド形式で,写真やインフォグラフィックを多く使ったスライドの資料もある。審査の方も幅広く許容し,ちゃんと本質を見てやってくれていると感じている。
テンプレートのようなものはあるのか?
基本的にはそんな穴埋めみたいな作業ではダメだと思う。やはり型にはめようて発想が今回の補助金の趣旨にそぐわない。企業が一つのストーリーをしっかり書いてくるということが,一つ大事なことで,一部コンサルタントが示すような細かい形式論法で穴埋めをしてみても,無味乾燥で読めたもんじゃないと思う。公式見解のYouTubeを見ていても,もっと自分の頭で考えろということ言ってるんでまあそうすると項目のポイントは押さえながらやはり自分たちが言いたいこと,自分たちが世の中で実現したいを,ストレートに表現するのが一番良い。テンプレートから入ると,形式を埋めることに頭が行ってしまい,オリジナルの自分の言葉がなくなっていうところが弊害である。
中身をどう充実させるか?
事業計画書に記載すべき必須項目は公募要領等に示されているが,当該項目を網羅することで力尽き,個々の記載が薄いともうダメである。しっかりリサーチをして,自社の戦略を明確にし,市場分析を行い,事業計画の中身をしっかり考えて考え抜いて表現する,そういうスタンスでやっていかないと駄目で,当社も支援してる会社で1回目通らなくて会社から事務局に問い合わせていただいたらいろんな問題点出てきて,それを全部潰していったら,(文字を小さくして)1回目の倍ぐらいの分量になったことがある(その案件は,無事6000万円,採択された)。必須項目及びその順序を守りつつ,オリジナリティをどうだすかが重要である。顧客と一緒に共同作業で作り上げていくが,やっぱり引き出し手がいないとアイデアが出てこない。最初のヒアリングでも,1-2割ぐらいしか埋まらない。そこからが勝負で,そこからもっと具体的に考えるために対話を重ねることで,内容が良くなってくる。また,会社が持っていない「外部環境の情報」を,支援者もしっかりリサーチして会社が気づいてないことを入れ込んでいく必要がある。また,計画の練度も意識する。分量を埋めるだけの作業ではなく,骨太の本質論から外れている枝葉末節を切ったりとかも含めて終わりがない作業。申請期限の数日前を事業計画作成の期限とし,その時点までどんどんどんどん改良に改良を重ねていくイメージがリアルではないかと思う。
事業計画書の分量は?
一応,決まっており,原則15ページ,補助金額が3000万円以下の場合は10ページ,ということになっている。ただ,これをオーバーしても別に落とすことはしないということが示されている。このあたりの許容度も今回の補助金が形式主義ではない点ですばらしい。
審査基準は?
審査項目っていうか採点基準この項目がちゃんと書かれてるかって審査基準もちゃんと公表されてるんでそれをしっかり問いに答えるとか審査基準に合致するような記載を心がけるというところが重要である。
※審査項目(今後変更になる可能性あり)
補助対象事業としての適格性:補助対象事業の要件」を満たすか。補助事業終了後3~5年計画で「付加価値額」年率平均3.0%((【グローバル V 字回復枠】については 5.0%))以上の増加等を達成する取組みであるか。
事業化点:① 本事業の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。② 事業化に向けて、競合他社の動向を把握すること等を通じて市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。市場ニーズの有無を検証できているか。③ 補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か。補助事業の課題が明確になっており、その課題の解決方法が明確かつ妥当か。④ 補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いか。その際、現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取組となっているか。
再構築点:① 事業再構築指針に沿った取組みであるか。また、全く異なる業種への転換など、リスク高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか。② 既存事業における売上の減少が著しいなど、新型コロナウイルスの影響で深刻な被害が生じており、事業再構築を行う必要性や緊要性が高いか。③ 市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの最適化を図る取組であるか。④ 先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域のイノベーションに貢献し得る事業か。
政策点:① 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用等を通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか。② 新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えて V 字回復を達成するために有効な投資内容となっているか。③ ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。④ 地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより雇用の創出や地域の経済成長を牽引する事業となることが期待できるか。⑤ 異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。また、異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。
加点:①令和3年の国による緊急事態宣言の影響を受けた事業者に対する加点,②最低賃金枠申請業者に対する加点,③EBPMの取組みへの協力に対する加点
第1回公募から第3回公募までの傾向と,第4回公募
要件は徐々に細かくなってきている。1回目と2回目は似たような感じではあったものの,3回目に大きな変更があり,企業の規模(従業員数)に応じて補助金の上限額が変わっている。また,回を通じて,あやふやな解釈だったところが明確になっている。第4回公募も,第3回公募とほぼ同じ内容となっている。第4回の公募における申請可能時期は,2021年の11月中旬とされている。申請期限は12月21日となっている。なお,申請には,事業計画書の作成だけではなく,各種手続への対応が必要であり,どんなにテキパキできる会社でも,申請期限の1か月前から準備した方が良い。手続には,決算書や,売上高を証明する資料や会社の従業員一覧など,多岐にわたる資料が必要である。また,GBizプライムというアカウントの作成や,ミラサポへの事業財務情報の登録なども必要になり,早めにやらないと,抜け漏れが期限直前に発見され,見送りとなってしまう場合がありうる。
効率的な共同作業の進め方は?
コロナの影響を受けたワークスタイルのパラダイム転換を踏まえ,リモートで行うことが非常に重要になってきており,また,リモートで行う効用をすごく感じるようになってきている。リアルタイムの同じ画面を見て話し合いながら作れたらもうそれはほぼを対面でやってるのと同じである。では,リアルタイムに同じ画面共有して作業を進めるのにはどうすれば良いか。簡易にはZoomの画面共有でもいい。しかし私がオススメしたいのは,Google Workspaceである。Google Workspaceには,Spreadsheet(表計算ソフト)とDocument(文章作成ソフト)とSlide(プレゼン資料作成ソフト)があり,その3つを駆使し,話し合いをしながら,例えば,今やることをお互い確定してった方がいい時はSpreadsheetでリスト化し,ToDoを書き,期限を書いて,合意して同じリストで進めていくというのが一つある。事業計画書はDocumentかSlideで作成することにし,中身の作業及び吟味に関して,リアルタイムで共同作成しつつ,必要に応じてZoomやLINEで話し合いながら,その場で変えていくということが,非常にパワフルな進め方となる。クラウドベースであるので,相手側の画面もそれに変わっていくため,双方向的に同じファイルに入力し,体裁を整えていくことがリアルタイムでできる。もう今の時代はもうそういうのはどんどんやってた方が良い。それにより,身のある対話の時間が増えるという効用がある。旧態依然,ただメールを送って確認しといて下さい,リプで断片的な情報が来てそっから解釈して,また改訂版を送ってということをやっていると,本当にまどろっこしい。どんどん仕事のやり方も進化させていかなきゃいけないと思うし,事業再構築補助金のところでもすごく役立つ。
どういうパートナーと協力するのが良いか?
人間は話してる時に一番脳が活性化する。話し合いながら共同作業をすることは非常に必要なので,そういうアプローチができるパートナーが重要である。本来は社内のメンバーだったりもするが,社内にはノウハウが足りないことが大半である。かといって外部のコンサルとなると,時間いくらとか決まっていたりとかおたがい気を遣い合って打ち合わせの頻度が少なかったりということがある。いつでも気軽に話せるような関係の社外のパートナーを見つけることが非常に重要である。
「採択されて終わり」ではない
9月上旬に,第2回公募の採択結果が発表されたが,採択されていきなりお金が先行でもらえるわけでは,当然ない。採択後,「交付申請」というものを行い,「こういう内容で補助金の申請しましたが,正式に見積書を取った結果,こういう形の具体的金額で補助金の交付を申請します」ということで補助金の交付決定を得るための申請を行う。採択社から交付申請を受けて,事務局が補助金額等の審査及び決定を行うことになる。そして交付決定後,補助事業を行い(期間は最長12か月),補助事業として設備投資や事業展開を行い,実際に出費を確定し,最終報告(確定検査)して認められて,補助金が着金となる。多くの申請者が,採択を取るところまでを必死で行い,採択を得るとほっと一安心してしまうが,ある意味そこんがスタートラインである。交付申請の手引き,交付規程,様式集,J-Grantsでの申請マニュアルなどと格闘しなければいけない。今までの申請作業と同じぐらいのパワーで,今度は手続論をやっていかなければいけない。よく問題になるのは,見積書の取得に関する部分だと思われる。50万円を超える出費に関しては相見積もりが必要となる。資産の購入で機械を買う場合などは割とわかりやすいかもしれないが,システムを構築しますとなれば,要件定義からやるんですかという話になる。そうすると結構時間がかかる。さらにそれは相見積りで比較考量しなきゃいけないということになる。
最後に
事業再構築補助金を活用した新規事業開発や業態転換は,会社にとっての一大プロジェクトである。交付決定後も,1年間の補助事業期間に,事業投資活動を行い,新製品の開発や新サービスの開発に取り組み製品化し,営業展開の準備を行う必要がある。その後,3年から5年,事業に取り組み,毎年事務局に活動状況を報告をするということになる。そこまで考えると,トータル6年7年のプロジェクトになってくるという感じである。これは生半可な気持ちでできるもんじゃないということを肝に銘じて事業再構築補助金という制度と向き合う必要があると考えられる。